Life value(仮)

目を覚ますと一面真っ白な場所だった。一瞬、雪山かと思ったけど、特に寒くも冷たくもない。

ーあれ、何してたんだっけ、よく思い出せないー

状況を把握しようとしてぼーっとしていた。見渡す限り真っ白だった。上を向いても、真っ白な空間が広がっていた。

ーどうしようー

ぼくは、とりあえず歩き出すことにした。何処も真っ白なので、方角や距離はいまいちよく分からない。

しばらく歩いて、ぼくは立ち止まった。よく見ると前方からふたり組で誰か歩いてくるみたいだ・・・。まだ距離は遠いけど、こっちに向かってきている気がする。

ーなんか怖いなー

でも周りを見渡しても、一面真っ白で、隠れるところもないし、とりあえずぼくは様子を観察することにした。

ふたり組が近づいてきたところで、ぼくは異変に気が付いた。ふたりとも顔が真っ黒だ。というか全身が真っ黒。ただ黒くてもシルエットははっきり見える。背丈も体型もいたって普通の男の人のシルエットだ。

そして奇妙なのは、息を合わせたように全く同じ動きで歩いてくる。機械的な動きというわけじゃなくて、本当の人間みたいな感じだ。頭をかいたり、携帯をみて歩いているような雰囲気もある。

ーどういうことだ?ー

人なのか、それなのかよく分からないが、ぼくに向かってどんどん近づいてきた。ぼくは怖くて少し後ずさりした。しかし「それ」はぼくとサッとすれ違うと、そのまま反対方向に歩いていってしまった。

ー何なんだろう、あれー

ぼくは離れていく黒い二つの人間のようなものをしばらくながめていた。

すると突然、後ろの方で「バツッ」と大きな音がして、思わずーう!ーと声が出てしまった。振り向くとそこには、ネックレスのようなものが落ちていた。

女性もののようで、きらびやかな装飾が美しく、中央には7色に輝く大きなダイヤがついていて、高価なもののようだ。

ーどこから落ちてきたんだろうー

上の方を見上げても真っ白で、どうやってこの場所にネックレスがきたのかよくわからない。

ー持っていっていいのかな?ー

とりあえずぼくはネックレスを持った。周りを見渡すと、黒い影はほんの少し見えるくらいになっていた。ぼくは彼らがきた方に向かって、歩き出した。

今度は結構歩いた。30分くらい歩いたかな。また黒いふたり組に出会った。今度も全身が真っ黒で、そもそも人間なのかどうかもわからない。でも、腕時計を確認したり、歩いている感じは完全に人間そのものだった。

勇気を出して、ぼくは声をかけてみた。

ーあの、すみませんー

するとぼくの声を遮って、ふたり組の片方が大きな声で喋り出した。

ーうわー、それ綺麗なネックレスですねー!いいなぁ、羨ましいです!高かったんじゃないですか?いくらですか?いやー、一度でいいからそんなネックレス手に入れてみたいもんですねぇ!それじゃ、ぼく行かなきゃいけないんで!さようなら!ー

いきなりまくし立てられて、びっくりしていたぼくを横目?にスタスタと歩いていってしまった。

あっけに取られて、ぼーっと立ち尽くしていたら、30mくらい離れたところで、何か話をしているみたいな声が聞こえたが、そのまま歩いていってしまった。

ー何が起きてるんだろうー

ぼくは彼らの後を追って、歩き始めた。