<この記事はこんな人におすすめ>
- 血の轍の要約・あらすじを知りたい
- 血の轍の漫画の特徴を知りたい
<この記事を読むとわかること>
- 血の轍の第1巻から第4巻までの本の内容、要約、あらすじ
- 血の轍という漫画の特徴
- 血の轍を読んだ筆者の感想
今回、押見修造さんの書いた漫画「血の轍」を読みましたので、そのあらすじ・要約と書評をまとめたいと思います。
血の轍の要約・あらすじ
登場人物
血の轍の内容・要約
ここから先はかなりネタバレを含みます。各巻ごとに内容を要約してありますが、見えないように隠してあります。
ネタバレが嫌な方は、こちらを読み飛ばしていただいて、この漫画の特徴の方を見てもらうことをすすめます。
中学生の主人公「静一」と、その母親の「静子」が過ごす日常が描かれることから物語が始まる。静一と静子の周りの、父親や親戚との関係が描かれている。
ごく一般的な家庭。ある時、静一の親戚で、同年代の「しげる」から静一の母親である静子が、過保護であることを伝えられる。過保護だと思ったことがなかった静一は、その言葉をきっかけに、はじめて自分が過保護であるかもしれないと気づくようになる。
静一の母親の静子は、静一の父親の親戚一同と仲があまりよくなかった。静子にとっては、唯一、静一のみが心のよりどころとなっていたのだった。
そんな中で、親戚一同が集まって、ハイキングをすることになった。ハイキング中にも、やはり静子は静一に対して過保護であることを親戚一同から指摘される。
そんな中で事件が起きた。ハイキングの休憩中に、親戚のしげるが、ふざけて崖のふちに近づいた。しげるがバランスをくずし、崖から落ちそうになったので、静子が思わずしげるを助けようと抱きかかえる。しかし、助けたと思ったしげるを、静子が崖から突き落としてしまう。
静子がしげるを崖から突き落としたのを見ていたのは、静子の息子の静一だけだった。静子は、まるでしげるが事故で崖から落ちてしまったかのようにふるまい、親戚一同にしげるを助けられなかったと嘘をついた。
静子に崖から突き落とされた親戚のしげるは、かろうじて一命はとりとめたものの、意識がない状態になってしまった。
しげるの転落事故の状況について警察官から事情聴取された際に、静子はしげるが足をすべらせてしまったと嘘をついた。静子が嘘をついているのを見ていた静一も、母を助けるために、しげるが事故でなくなったことに間違いないと警察に嘘をついてしまった。
自責の念にかられる主人公の静一の自宅に、同級生の吹石が訪れる。吹石は静一のことが好きで、勇気をだして、静一にラブレターを渡した。
その時、静子がたまたま忘れ物をして自宅に帰ってきた。その結果、静子に吹石と静一が一緒に自宅の部屋にいたところを目撃されてしまう。
吹石が帰った後、静子は静一に吹石からもらったラブレターを見せるように要求する。ラブレターの内容みて、吹石に静一を奪われるかもしれないことを受け止められない静子。
結局、静子は、静一にラブレターを一緒に破るように強要する。本当はラブレターをもらってうれしかった静一だったが、静子のことを優先し、吹石からのラブレターを静子と一緒に破ってしまう。
主人公の静一は、自責の念と母親の静子への疑心暗鬼から吃音になってしまい、言葉を発しようにもうまくしゃべれなくなってしまった。
その様子を心配した吹石が、ラブレターの返事と、静一が吃音でどもってしまっている理由をきいた。しかし静一はラブレターを破って吹石をないがしろにしてしまった気持ちから、吹石の質問に答えることなく、その場から逃げ出してしまった。
その後、静一は父とふたりで、しげるの病院にお見舞いに行くことになった。植物状態で変わり果ててしまったしげるの姿と、しげるの母であるおばちゃんにやさしくされ、静一の後悔の念が一層強くなっていった。
夜、静一の姿が見当たらないのを心配し、外に静一をさがしに出ていた静子が家に帰ってきた。その際に、静一が静子になぜしげるを殺してしまったのか、なぜ嘘をついてしまったのか、もう逃げないでほしいと静子に伝える。しかし静子は、子供のくせに偉そうにするなと、静一を一蹴してしまう。
相変わらず吃音によって、今まで通り普通にしゃべることができなくなってしまった静一。学校で母親と外出していたことをからかわれた静一は、いら立ちから、教卓を蹴り、教卓壊してしまう。
そんな不安定な静一を心配した吹石が、下校中、静一に声をかけた。そして吹石が渡したラブレターの話をした。静一はラブレターをもらったことをうれしかったと伝え、吹石と付き合うことになった。
静一は、吹石と付き合うことになってから、吹石と夜遅くまで話して家にかえるようになった。そんな帰宅が遅くなった静一を心配した静子が、もっと早く家に帰ってくるように伝える。
それでも吹石といる時間を大切にした静一。その日も遅くまで河原で吹石と話をして、身を寄せ合っていた。しかし、静一を心配して、探しに来ていた静子に、吹石と一緒にいるところを目撃されてしまう。
静一は静子への裏切りにもにた感情が押し寄せるが、吹石に助けられ、自我を取り戻し、静子へ決別の意思を伝える。自分の居場所をなくした静子は、呆然自失。吹石が静子の異常性に感づき、静一と助けることを決める。
血の轍の書評
血の轍を読む前
私は押見修造さんの作品である惡の華を読んでいました。惡の華を読んだときに、なんていうんでしょうね。すごい衝撃を受けました。その面白い視点っていうんですかね。
人間のどろどろしたところを表していて、すごいなと思いました。今回の血の轍がどんなふうに面白いのかなと思って、楽しみにしていました。
血の轍を読んでの気づき・特徴
第1巻の衝撃が異常
まず血の轍第一巻の衝撃がすごいです。ほんとに最後の結末にびっくりしました。それと同時に静子はかなり思い詰めていたのかなとも思いました。まさか、あそこで崖からしげるを突き落とすとは思いませんでした。
でもそれまでの描写から、かなり不気味な雰囲気がしていました。だから実際にしげるを突き落としてから「うわーまじかー」と感じました。この第一巻の面白さがあったからこそ第2巻、第3巻とどんどん読み進めることができました。
モノローグの少なさ
モノローグというのは、主人公の心の中のセリフです。多くの漫画では、心の中で考えていることを文章にしてあらわします。ところがこの血の轍には、モノローグが全然ありません。だから表情でその人の感情を読み取る必要があります。
それが面白いんですよね。その表情によっての感情の推測は、10人いれば10通りの解釈の仕方があるような漫画になってるんです。だから感情の推測は出来るんですが、正解は出来ないと思います。それがこの血の轍の面白さのひとつになっていると思います。
2回読むことで表情の意味が分かる
1回目に読んだときには気づかなかった表情の意味が、2回読むとわかります。たとえば、第1巻の最初は日常生活のことについてかいているんですが、その時から静子の影の部分や、本当は親戚と一緒にいるのがいやな気持などが、よくみると分かるようになっているんですよね。これにはびっくりしました。
文字数が少ないからサクサク読める
作品中には、会話がそこまで多くなく、なにも文章がないコマがたくさんあります。いい意味で、無駄な文章がほとんどありません。だからサクサク読めます。
多分、1時間もあれば楽に4巻読めてしまうじゃないかと思います。文書がなくても、物語の内容にドキドキするので、どんどんページがめくれて、え?もうおわり?といった感覚がありました。
とにかく「ヤバい」の連続
とにかくです。とにかく「ヤバい」の連続です。途中、主人公の静一や静子の心情が読めなくなる時があります。どうしてそんなことをしたの?と思うことがたくさん出てきます。それを読み解くのが楽しんですよね。
登場してくる人物の心情が読めないような衝撃的な展開がたくさんおこるので、よんでいて飽きません。
直接的でない不気味さがある
これも血の轍の特徴だと思うんです。例えばグロテスクな絵を描けば、気持ち悪くなるじゃないですか。それは当然だと思うんです。血の轍は普通の絵なんです。普通の絵なんですけど、なんか不気味なんですよ。
なぜなんでしょうね。それがすごいです。冒頭に静子の微笑があるんですが、それがすでに怖いんですよね。それを描けているっていうことは、押見さんのすごさなんだと思います。
まとめ
最近読んだ漫画の中で、一番面白いし、他の人にもぜひ進めたい作品です。ただし確実に人を選ぶ作品だと思います。好きな人と嫌いな人が分かれるだろうなと。ただ好きな人なら絶対に何度も読み返したくなるような作品だと思います。